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アナログレコードの感動を |
今年のオーディオイベントは、ゲストとして参加したAVフェスタのみしか行けませんでした(残念!)。印象に残ったのは、SACDブースで聴いたアナログレコードの音(SACDソフトではないのが、なんとも残念ですが・・・)。レコード→DSD→PCM→SACDという聞き比べのイベントで、非常に興味深い結果でした。レコードが、“音楽の生命力感”としてはダントツだったように感じました。
とはいえ、好きなアーティストのソフトはCDしか発売されないのが一般的ですし、個人的コレクションも膨大な量があるのはCD。20年の歴史は、想像以上に根深いものです。私も、ここ数年レコード再生環境の構築を目標にはしているのですが、なぜが二の足を踏んでいるのも事実。
そんな中、気になるプレーヤーがありました。大阪の逸品館さんが発売された『AIRBOW UX−1
Supreme emotion』です。 代表である清原さんをして、“ついに本気で「レコードを手放しても良い」と思ったほど”と言わしめるサウンドとは?!
先週、1週間の貸し出し試聴をさせていただきました。なんとも“悩ましい”、1週間のはじまりです。
「聴かなかったことにしよう・・・。」
私が10万円台のプレーヤーをチューンしてメインで使っているのは、「それで十分である」と考えていたからです。仕事柄、いろいろなプレーヤーを聴きます。もちろん高級機といわれるものも、全部ではないものの、いろいろ聴いています。確かに良いプレーヤーも多く存在するのですが、どれも“CDフォーマット”の枠の中にあるように感じます。それならば、潜在能力の高いプレーヤーをチューンしてやるのが得策と考えたのです。プレーヤーの寿命や、ユニバーサル機の進歩を考えると、悪くない案でしょう。実際、チューン機の実力はなかなかのもので、上位機種に負けず劣らずと自負しておりました。
UX-1SEの音はどうでしょう。清原氏のコメントに偽りはありません。実は、同業ということもあり、特に厳しくチェックしてみたのですが、素晴らしい仕上がりでした。CD再生が、特に優れているように感じます。SACDやDVDオーディオの再生が悪いわけではなく、その差が少ないのです。これはCDソフト財産を考えると、素晴らしいことではないでしょうか。
AIRBOW UX−1 Supreme emotion。
重量も25kgとヘビーですが、価格も150万円(税込)と超ヘビー。果たして、どんな音がするのでしょう。
『CD特有の高域の歪み感が全くなく、同時に倍音の頭打ち感も完全に解消』と、逸品館の清原氏。そんなはずは・・・と思うのですが、実際に私もそう感じました。音だけで分類すると、“音の良いCDソフト”を聴いているというより、“ノイズの無いレコード盤”という印象です。といって、カマボコ状の音かといわれると、デジタル特有のワイドレンジなのですから、驚きとしか言いようがありません。
従来の高額プレーヤーは、ちょっと音楽を高級に聴かせるという印象が私にはありました。マスター音源と比較すると、それが気になってしまいます。UX−1SEの音は、従来のCDプレーヤーには無い音でありながら、決して嘘つきの音ではありません。正解の音です。
『That's Danceable vol.1 リミックス/リマスターfor AUDIO』を鳴らしてみると、プレス盤でもマスターを聴くような感動が。もっと褒めるなら、レコーディング時のプレイバックくらい嬉しさが蘇ってきます。確かに、マスターから比べると、プレス盤の音質は劣化しています。その劣化が気にならないように聴こえるので、UX−1SEの音は生命力あふれ瑞々しいのではないでしょうか。魅力の秘密は、このあたりに隠されていそうです。分解能も、もともとのメカの素晴らしさが出ており圧倒的。今まで気がつかなかったリップノイズが発見できたりして、思わずハッとさせられます。
この先の音はあるのだろうか。レクスト製品といくつか試してみましたが・・・・・・・・完敗です。例えばRS−SQUAREを天板に乗せてみると、音楽のバランスが崩れてしまいます。ブロウを電源スイッチに貼っても、同様の結果でした。完璧な料理に追加調味料が必要ないのと同じ。早いマシンにはチューニングが必要ないのと同じ。そう感じます。
唯一選択肢があるとすれば、電源ケーブルの変更。これは純正のままでも素晴らしいですが、素性の良いケーブルなら更なる音の変化を楽しめます。 返却の日、元のプレーヤーに戻して愕然としました。これがいつも聴いていたCDフォーマットの音なのです。
良い経験をさせていただきました。
「150万円のプレーヤーなんて!」と思っていましたが、この音を聴いたあとでは決して高額とは感じないのは私だけでしょうか。といってもすぐには買えませんが、久しぶりに“欲しい”と思えるプレーヤーに出会いました。
今度は皆さんといっしょにUX−1SEの音が聴けるように、逸品館さんにお願いしておきます。