現在のオーディオを取り巻く問題点

n       オーディオのそもそもの原点

20世紀に私達は、音声を記録しそれを「望むときに、望む場所で再現する方法」、いわゆる「オーディオ」を実用化しました。発明当初は、ただ音楽を聴くための「手段」に過ぎなかったはずのオーディオですが、たゆまざる技術革新が続けられた結果、20世紀後半には「音楽を聴く」という語意がコンサートへ行くことではなく、「録音された音楽を聴く」という意味に変えてしまうほどの大きな改革を私達と音楽の関わりにもたらしました。

オーディオは、当初の目的であった「演奏の再演」という枠を超えて音楽鑑賞のありかたに大きな影響を与え、ついには「オーディオ(ステレオ)で聴く音楽」が「生演奏」を越える文化に育ったのです。このように「発達した技術が旧来の文化と融合し、新たな文化を生みだす現象」は、20世紀以降特に顕著に感じられます。

 

オーディオの原点

演奏

録音

配布

再生

再演奏

 

電気的に音を作り、電気的に楽器の音量を増幅する技術が進歩した結果、POPSやフュージョンなどのように「どこまでが生演奏で、どこからが再生音楽なのか?」その区別が難しい音楽すら生みだされています。また、今後どれほどオーディオが進歩しても、完璧に「生演奏を再現する」事は不可能です。しかし、それでもオーディオのそもそもの原点は、録音再生というプロセスを経ても「演奏や奏者のメッセージをできるだけ損なわず伝える」ということが紛れもない事実なのです。

n       現在のオーディオを取り巻く状況には多くの問題がある

歴史に名を留めるような音楽家達は、一生の大半を音楽に捧げ、「しかるべき師に師事して深く音楽を学び」血のにじむような努力を重ねてやっとその高みに辿り着きました。そんな偉大な芸術を「音を媒介として広く世界に伝えよう」とするオーディオ機器の音作りには、当然それと同じくらいの責任があってしかるべきだと思います。

しかし、残念ながら「音楽のプロフェッショナルとしてのトレーニング(学習)を経験していない者」が、この業界では幅を利かせ過ぎているようです。オーディオ業界のみならず音楽業界ですら、音楽的な責任よりも金儲けの方が優先されるのが現実です。「音楽という芸術の深さと重さ」を十分に理解し、音楽芸術という文化の一端を担う自覚があるなら、自信を持てない製品(演奏)を世に送り出したり、金のために魂(気持ちの入っていない製品や演奏)を売るようなことは止めて欲しいと思います。

綺麗事ばかりで生きて行けるわけではありませんが、無垢な気持ちで音楽やよい音を求めるお客様を「新技術(新製品)の実験台」にしたり、金儲けのための食い物にしていいはずがありません。業界全体に「音楽に我が身を捧げる」という強い情熱が見られず売上優先の風潮が蔓延しています。新聞・雑誌などの有力メディアですら、間違った問題提議や解決方法・意味のない風評を煽り立て、消費者を惑わせる有様です。

n       自己流のオーディオを続ける時に、是非注意して欲しいこと

確かにたとえそれが最良の方法でなくても、雑誌やオーディオショップが薦めるままアクセサリーや装置を買い替え、音が良くなったと納得できれば、それでオーディオは十分楽しいものです。もちろん、そういう「オーディオのあり方」や楽しみを否定するつもりはさらさらありませんが、「そういう楽しみ方」が高じて「技術(音を変える手段)そのものを楽しみ始める」と危険です。

音が良くなったかどうかの判断には、必ず「音楽を再生」して判断します。しかし、もっぱらオーディオでしか音楽を聴かず、演奏会へも行かなければ、自分が鳴らしている「演奏(音楽)の善し悪し」を判断できるようにはなりません。厳しい言い方をすれば音楽的教養を積まなければ、決して「フェアな音」は出せないし、音楽の良否を判断できるほどの「フェアな見識」は、本格的な厳しい勉強(トレーニング)をしなければ、なかなか育たないのです。

装置を何度も買い替え、セッティングを煮詰めて音が良くなるごとに、「自分が音を良くした結果、より音楽が正しく再現されている」という勘違いが起きることが恐いのです。オーディオ歴で音楽を聴いている時間が長いだけで「演奏(音楽)の善し悪し」を判断できているという誤解(過信)が生まれるのが問題なのです。そうなるとオーディオ(音)は、同道巡りになってしまってそこから全く進歩しなくなります。自分の出している音を基準に何の疑問も持たず「それがその奏者の演奏である」と誤解しないで欲しいのです。「好き」と「良い」とでは基準が違います。

人は皆、自分に溺れれば視野が狭くなり、簡単な違いにすら気づけなくなります。どんな趣味、どんなスポーツでもそうですが「最初に正しい目的」をしっかり学ばず我流を続けると、ゴールへたどり着けなかったり遠回りになってしまいます。

n       技術者はもっと真摯に音楽を学んで欲しい

我流を続けて趣味としてのゴールにたどり着けないのは勝手ですが、そういう好き嫌いと善し悪しの区別を勘違いしている技術者や、フェアな見識を持たない評論家が自分達の思いこみで機器や音楽の評価を説くのは感心しません。権威ある立場の人が間違ったことをいっても、多くのユーザーはその論評をそのまま受け入れてしまうからです。悪意はなくともそれは「音楽文化の冒涜」に値するとんでもない行為(重罪)です。「著名な新聞や雑誌の記者や評論家、大メーカーのエンジニア」などに課せられる「責任」は、一般ユーザーのそれとは較べものにならないほど重いのです。

もし、彼らが「無責任に自己中心的な音の評価」を続けるなら、彼らの作る製品や雑誌は「大衆の心に広く深い感動を与えられる」ことなく彼らの作る製品(雑誌)は売れなくなり、ついには誰も見向きすらしなくなるでしょう。下手をすると音楽文化を衰退させてしまいかねません。将来それが現実となったなら、それはすべて「オーディオ技術の目的(オーディオのそもそもの原点)を見失った事」が原因です。オーディオ技術の目的は「音楽を正しく伝えること」で意味のない新技術の実験場でも、オカルト的な技術を競い合う場でもないのです。業界関係者は、もう一度自分自身の胸に手を当てて、深く反省すべきだと思います。

ずいぶん強い口調で責め立てていますが、自分自身も大同小異。この文章は、「自分に宛ての反省文」と読み流してください。しかし、趣味としてオーディオを通じ音楽を見極めようと志されるなら、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の心境で、日々音楽に学ぶ事を忘れないようにしたいものです。所詮オーディオなんて、音楽に較べれば、未だ実に浅い文化でしかないのですから。

マルチチャンネル・オーディオの薦め

n       ステレオ方式の行き詰まり

マスターテープの録音を行いAIRBOWという再生機器を製作し、それを鳴らしきるための最高の環境(逸品館・3号館)まで手に入れました。しかし、本来怠け者の私の正直な感想は「ああ〜しんど」です。高音質を突き詰めようとすればするほど、セッティングや装置の使いこなしなどやらなければいけない問題が非常に多くなり、煮詰まれば煮詰まるほどそれらの取り扱いが神経質なまでにデリケートになったからです。「たった一枚のCDをいい音で聴くため」に決して嫌いではないけれど、どうしてこれほどまで「努力を強いられなければならない」のでしょうか?絶対に納得ゆきません。こんな労苦をとてもお客様に強いることはできないとさえ思いました。実際、オーディオという趣味が広がってゆかないのは「しんどい割に音が良くならない」からだと思います。もっと簡単に言うなら「装置を買い替えるだけでは音が良くならない」からこそ魅力が薄れてきているのです。

最近のオーディオ業の売上比重が装置の買い替えから、高価なアクセサリーの買い増しへと移行しているのはその象徴でしょう。一番の原因は、すでに述べた「オーディオの目的のすり替わり」と「メーカーの怠慢」にあることは間違いありません。しかし、それ以前の問題として、「オーディオがしんどくなる原因」のほとんどが「ステレオ方式」と「CDというフォーマット」が抱える根本的限界から発生していると思うのです。マルチチャンネルに移行して気付いたのは、2本のスピーカーで部屋いっぱいに音を広げるのが難しいということ。そして、SACDなどを聞けば、CDという20年以上前の「デジタルフォーマットの限界」を痛感するはずです。それらが足枷となり、現状のハイエンド・オーディオ技術(やり方)で高音質を追究しようとすると、多くの問題が行く手を阻んでしまうのです。しかし、多くのオーディオメーカーは、未だその重大な問題に気付いていません。

あきらめようと言うのではありません。逆に、これらの問題に気付き謙虚に反省してこそ初めて、「ステレオ+CD」で心地よく音楽を聴くための「合理的な方法」が見えてくるはずです。限界が近づいているにも関わらず「理想」を追究するから、問題が生じるのです。高音質を追究するのではなく、限られた情報でいかにうまく「音楽を作れる」かが、ポイントです。スピーカーや機器の設置に「AIRBOW・WOOD−BOY」をお使い頂ければ、この言葉の意味を実感して頂けると思います。

n       CDはなぜ当初嫌われたのか?

CDは、レコードよりあれほど「物理特性(測定データ)」が優れているのに、なぜCD導入当初からの「レコードマニア」が根強く存在するのでしょう。それは、単純にCDに録音された楽器の「音色が良くない(音色が損なわれている)」からです。

楽器の音色は、「非常に繊細な音の重なりによって構成」されています。しかし、CDのフォーマットでは「アナログをデジタルに変換する際に切り捨てられる成分」が大きく、「楽音の美しさや瑞々しさが損なわれてしまう」のです。CDの音が「刺々しい」・「粉っぽい」・「デジタル臭い」と言われるのはそのせいです。それに対しレコードに収録された楽器の音色は、「多少ボケ気味になってもその美しさや瑞々しさを失わない」ため、音色重視で音楽を聴くリスナーには、未だにCDよりレコードの音質が好まれているのだと思います。

CDよりレコードを好む愛好家がまだまだたくさんいらっしゃる。この単純な事実から「CDフォーマット」には「音の美しさを完全に再現できていない」という問題があることがわかるはずです。それは、CDフォーマットの再生上限周波数が20KHzしかないことと無関係だとは思えません。

n       新世代デジタルフォーマットの音質はどうなのか?

新世代のフォーマットであるSACDやDVDオーディオの「音色」はどうなのでしょう?安心してください。ソフトに収録されている音声再生上限周波数が40KHzを超えると、この問題は大きく解決に向かいます。音色の再現はもちろんのこと音の広がり感、密度感、実在感など新世代のフォーマットではそれらのすべてが、CDよりも圧倒的に良くなっています。圧縮により音が悪いと思いこんでいた、DVDビデオの音声すら、PS7200Specialの完成によってドルビー・デジタル録音がCDとほぼ同じで、DTS録音ならCDよりずっと音が良い事が確認できたのです。

 

生の楽器の音は、音色が美しい。

CDでは音色がやや損なわれる。

CDと新世代デジタルの音質の違いをさらに細かく説明しましょう。まずDVDオーディオ。これは、デジタル変換方式はCDと同じPCM録音方式ですが、帯域(Fレンジ)や音の細やかさ(Dレンジ)が大幅に拡大されています。現在発売されている「高音質CDソフト」と「通常のCDソフト」の音質差をうんと大きくしたような違いだと御想像頂ければほぼ間違いありません。

PCM録音方式の場合、サンプリング周波数が96KHzを超え、量子化ビット数が24Bitに達すると、「楽器の音色の再現」は、ほぼレコードに近くなります。そして、96KHz/24Bit以上のフォーマットで録音されたDVDオーディオを聞けば、レコードに比較してややドライな傾向はあるものの、楽器の音色の再現はレコードを超え、さらに生の楽器に近づいているように感じられるのです。

それに対しSACDは、あらゆる音楽の再現性に於いてついに「レコードを凌駕」していると断言できるレベルに達しています。(ただし、これは私のSACDの音質への大きな誤解を解いた、唯一のSACDプレーヤー[marantz SA-12S1]で聞いた場合だけに限られます)PHILIPSがそのメカニズムから設計したSA−12S1だけが民生機のSACDプレーヤーとして初めて、そして唯一「ついにレコードを遙かに凌駕する可能性を聞かせてくれた」のです。

SACDで聞く楽器の音色は、非常に生に近い音質です。そしてレコードよりも圧倒的に音が細やかで、もちろんチャンネルセパレーションは抜群、低音もしっかりと収録されています。60年代以前の演奏がSACD(DSD録音方式)で再収録されたSACDソフトを聞けば、「ああ、これでやっとレコードから卒業できる」と実感できるはずです。

SACD・DVDオーディオでは音色はほとんど損なわれない。

 

 CDの音質を完全に凌駕する新世代デジタルサウンドでは、レコード以上の「生楽器に匹敵しうる多彩な音色の表現」が実現しています。その美しい再生音を聴いていると、「音本来の美しさがそのまま再現されること」が良質な音楽再演の基本だと再認識させてくれます。もちろん、音色の再現だけではなく、レコードは言うに及ばず、CDを遙かに超える物理特性(Fレンジ・Dレンジ・チャンネルセパレーション)も達成されています。

n       新世代デジタルへの期待

新世代デジタルフォーマットなら、安価な機器でも従来の高額なCDプレーヤーに勝るとも劣らない「良い音」が楽しめるようになります。新しいフォーマットのソフトがもっと増えてくれば、この事実は広く知られることとなり、レコードを知らない世代にも、オーディオファンがどんどん増えてくると思います。現実に、ホームシアターで「音の魅力を初めて知り」そこから、オーディオファンへの道を進む人が少なくないことが、それを証明しています。そうなれば、オーディオはこれまでのような「マニアックで閉鎖的な趣味」ではなくなり、家族みんなで楽しめる「実用的で健康的な趣味」へと変わっていくことでしょう。

そればかりではありません。ソースが良くなると「アンプやスピーカーなどの音質差」が今まで以上に明確にわかるようになります。結果、「装置を買い替えたときの音質差が今まで以上に大きなもの」となり買い替えの判断に間違いがなくなります。「無駄な買い換えがなくなり投資すると確実に音が良くなる」これは、オーディオマニアにとって非常に魅力的な誘惑です。

n       音色だけではなく、音楽の運動(躍動感)の再現性が格段に向上する

音楽の三要素は?と問われて、すぐに「リズム」・「メロディー」・「ハーモニー」を思い浮かべられた人は、かなりの音楽ファンだと思います。しかし、この「3要素」よりも、もっと基本的な音楽の要素が二つあります。それは、「音色」と「運動」です。

「音色」とは、「音の鮮やかさ・音の美しさ」などと表現される、文字通りの「音の色」です。様々な「色彩」が再現されて初めて、多彩な表現が可能となるのは言うまでもありませんが、すでにご紹介したように新世代のデジタルフォーマットでは「音色」は生の楽器に匹敵するほどの「密度と精度」で再現されるようになります。

もう一つの要素である「運動」とはいったいどのようなものなのでしょう?簡単な言葉に置き換えるなら「躍動感」。それには「時間と共に変化する音のあらゆる要素」が含まれています。もちろん「音色の変化」も含まれます。しかし、運動の再現に最も重要なのが「音の広がり(音場空間の動き)」なのです。モノラルからステレオに変わったときに、音の広がりや動きが大きく改善されたのと同じように、ステレオがマルチチャンネルに進化すれば、この「音の広がり感」や「音の移動(定位感)」は大きく改善されます。幾何学にたとえれば、モノラルが1次元、ステレオが2次元、マルチチャンネルは3次元の広がりを持っています。

n       音の運動の再現に必要なのは360度方向への音の広がり

「運動の再現」に必要なのが「前後左右への立体的な音の広がり」です。そのためには「360度全方向から音が来ること」が重要です。しかし、モノラルやステレオでは、「前方のスピーカーからしか音が来ない」ために、リスナー後方からの音量が不十分でした。もちろんそれらの方式でも、ルーム・アコースティックやスピーカーのセッティングを煮詰め、左右や背後の壁に音を反射させればかなり本格的な「運動のイメージ」を作りだすことはできました。しかし、それはあくまでも「リスニングルームの反射音」を補助的に使った「擬似的な運動のイメージの再現」でしかない上に、「リスナー自らが部屋の残響音を調整して擬似的に背後からの反射音」を作りださなければならないため、「運動のイメージを正しく再現」するには、相当本格的な音楽知識と調整のための専門的知識が必要とされました。

これに対し、マルチチャンネル再生ではリアスピーカーが加わり、実際に後ろから音が届くため「擬似的であやふやだった運動のイメージ」が「実在感を伴う正しい運動のイメージ」へと大きく改善されます。試しにマルチチャンネルソフトの再生中にセンタースピーカーやリアスピーカーの音だけを消してみれば、それらの存在による「音場空間の広がりや実在感(楽器の定位感)の向上」が非常に大きいものであることが確認できます。

Chでは前からしか音が来ないので音の広がりが不足する

心地よく聴けるエリアも狭い

Chでは音は大きく広がり音場に包みこまれる感じがする

心地よく聴けるエリアも広い

 

n       セッティングやルーム・アコースティックの煩わしい調整が大幅に簡略化される

実際に後ろにスピーカーを置いて音を出すことで、背後からの音がリスニングルームの残響特性(リスニングルームの反射音)に依存しにくくなるのも重要なポイントです。「背後からの反射音」が「ルーム・アコースティックの綱渡り的な調整によるもの」ではなく、「リアスピーカーの音量や音質などをAVアンプで調整する」だけで簡単に再現できるようになるのです。そして、部屋の残響特性も「出来るだけデッドになるように配慮する」だけで良くなり、面倒で難解なセッティングが大幅に簡略化できます。また、リアスピーカーの存在が、オーディオ専用ルームではなくリビングのようなありふれた空間でも高音質再生を可能とします。

ステレオ方式ではどうしても避けられなかった、ステージの大きさが部屋の大きさに比例してしまうという問題も、残響成分を部屋の反射の利用ではなく、強制的にスピーカーから再現するため、たとえ4畳半でも「実寸大コンサートホールのような巨大な音場空間」が実現します。4畳半にニヤフィールド向きの小さなスピーカーを5本入れてマルチチャンネルで「交響曲」を聴けば、その圧倒的な臨場感に、「ステレオ方式」に2度と戻れなくなるのは間違いありません。

n       リスニング・エリアが大幅に拡大される

ステレオでは、「音場空間(サウンド・ステージ)」はリスナーの眼前にコンサートホールが存在するかのように展開されましたが、マルチチャンネルでは、コンサートの中に入ったようにリスナーを取り囲む形に展開します。リスナーを中心に「音場空間」が球形に展開するのです。さらに、マルチチャンネル再生では、「立体感」を感じるエリアが圧倒的に広くなり、それまでのように「リスニング・ポジションによる音質差の大きさ」に悩まされずにすむようになります。5本のスピーカーに囲まれたエリアの中にいるかぎり、その「包み込まれるような大きな広がり感」は変わることがありません。

ステレオ方式とマルチチャンネル方式の音質を相互比較する様々な実験で、スピーカーの数を増やせば「再現される楽器の音色の数や密度感がそれに比例して増える」という新しい発見もありました。スピーカーの数を増やし、それを正しく配置さえすれば音楽の密度は飛躍的に高まります。

n         自宅がコンサートホールに変わるときがやってくる

これまでのオーディオ(モノラル・ステレオ)は、「音楽の運動」を生演奏と同じに再現しきれませんでした。それが「オーディオ」という「一種独特の欺瞞的な音楽世界」を作り上げていたのです。その結果、「音楽」そのものが「生演奏と異質な表現の文化」へと変貌し、閉鎖的な世界を形成しつつありました。

しかし、新世代のマルチチャンネル方式では「音色」と「運動」の表現が「生演奏と同等になる」ために「その表現力が飛躍的に現実味(生の演奏に近づく)」を増します。ソフトも小手先のごまかしではなく「実質的な内容で勝負」出来るようになるはずです。音楽はオーディオが開花する以前と同じように、再び「本当によいものが良い」と評価されるようになるでしょう。

20世紀に犯した間違いを再び繰り返さないためにも、マルチチャンネル化への進歩によってオーディオは、「本来在るべき姿、コンサートの記録再現の手段」へと戻りつつ、それを超える新たな文化として開花して欲しいと、私は強く願います。

マルチチャンネル方式の実現で音楽の表現はそれまでに較べ遙かに「正確」・「濃密」・「簡便」になります。それは映画のスクリーンの中を転がっているボールが、スクリーンから飛び出して目の前を転がっていると感じられるほど大きな差になってあらわれることでしょう。音楽はもちろん、スポーツ中継や、ドラマ・ニュースなど、あらゆる音が「立体的」に楽しめるようになれば、私達と「高音質」の関わりは従来よりも遙かに「親密」になるはずです。「自室をコンサートホールに変えたい」オーディオファンなら誰もが見る夢が実現するときが、ついにやってきたのです!

ステレオ(2Ch)を進化させてからでも遅くない

n       ステレオの音をまず良くしよう

 マルチチャンネル方式がいかに音が良いといっても、マルチチャンネル録音されていない古い音楽にも、CDでしか発売されていないソフトにも素晴らしい音楽は沢山あります。そこでマルチチャンネルに移行する前に、現在お使いのスピーカーの音をさらに良くするための設置法を説明しましょう。

ステレオでは2本のスピーカーが、マルチチャンネルではさらに多くの5本になるわけですから、まず「2本のスピーカーをいい音で鳴らす技術を習得する」のは、今後のことも含めてとても大切なことなのです。

n       音場の濁りを少なくできる、合理的なスピーカーの設置位置

普通、ほとんどの人はリスニングポイントを部屋の中央にとり、スピーカーをD線のように部屋と並行に設置しています。しかし、これではスピーカーから出た音がまともにリスナー背後の壁で反射してしまい、不必要な定在波を生じます。これを回避するためにはリスニングポイントをG→G’に移動し、部屋を斜めに横切るF線上(オフセット角度5度以上)にスピーカーを設置すべきです。AとB・CとEの距離は、部屋の大きさによりますが50p〜1.5mは必要です。しかし、Dの距離を優先して1.2〜1.5m以下にはならないようにして下さい。

さらに重要なことは、スピーカーの方向誤差をGあるいはG’に向かって完全に0度に設置した上で、α=α’・β=β’の誤差を数o以下にすることです。そうすればスピーカーの存在を完全に消し去ることが出来ます。 (そのためには、レーザー・セッターの使用が必須となります)  

レーザー・セッターの使用法

レーザー・セッターは左図のように、リスニングポイントの前に置いて使用します。レーザー・セッターを使って左右のスピーカーの位置を精密に合わせることで、音は空間で歪むことなく綺麗に混じり合います。音場空間がそれまでの数倍の大きさになり、ひとつひとつの音がハッキリと分離して聞き取れるようになります。スピーカーの存在感や圧迫感が消え、ストレス無く音楽を楽しめるようになります。

(レーザー・セッターは逸品館のオリジナル商品です)

n       左右のスピーカーを別々に鳴らしながら調整しよう

スピーカーを理想的な位置に置くのが難しい場合や、レーザー・セッターが手元にない場合には、次のような方法でスピーカーの音をある程度まで良くすることが出来ます。

まず、CDからアンプに繋がっている線(インターコネクトケーブル)の一方を抜いて適当なソフトを再生します。スピーカーを前後や左右に動かしながら「音の濁り(曇り)や広がり方」に注意して聞いてください。「音がクリアーに広がって聞こえる」のが「スピーカーを置くのに適した位置」です。次に、反対側のスピーカーも同じやり方でいい位置を見つけてください。

このように、スピーカーのセッティングを行うときには、左右それぞれのスピーカーを別々に鳴らしながら行うのがポイントです。2本のスピーカーを同時に鳴らすと、それぞれの音が混じり合って音が濁り、ベストな位置を見つけるのが難しくなるからです。

さらに音質向上を求める場合には、レーザー・セッターを使ってスピーカーの位置を追い込みます。レーザー・セッターを使うとすでに決めたスピーカーの位置や方向が変わるため、最初に行った「音の濁りの低減効果」が薄れます。再度、その位置の付近で左右のスピーカーを少しずつ動かし、濁りの少ない位置を探してください。そして、またレーザー・セッターで左右の位置関係を調整し、追い込んで・・・この作業を根気よく繰り返すと、スピーカーの音質は信じられないくらい向上します。

n       ルーム・アコースティックを調整し音の広がりと定位を向上する

スピーカーの位置は、ほぼ完璧に調整できました。次に、スピーカーを動かすのではなく、カーテンやカーペットなどを使って部屋の残響成分などの悪影響を取り除きましょう。この作業を「ルーム・アコースティックの調整」と呼んでいます。

ルーム・アコースティックを調整する目的は、「特定の定在波(特定帯域の音響エネルギー)の低減」と「再生音に不要な輪郭成分を形成する初期反射の低減」です。前者は主に「音場空間の濁り」に影響し、後者は「音の運動(躍動感)や音の分離感」に大きく影響しています。

 

定在波は前後左右の壁の間で発生する

定在波は天井と床、壁のコーナーでも発生する

 

定在波は、フラッターエコーとも呼ばれ「特定の周波数(特定の大きさの音)が反射を繰り返し、いつまでも減衰せず残響として残ってしまう」ことです。定在波は平行する2つの平面の間で「音が往復を繰り返す」ことにより発生します。部屋の中で一番大きな平行面である「床と天井」に注目してみましょう。「床」が畳である日本間の場合は、比較的「天井と床の間のフラッターエコー」は比較的小さく大きな問題とはなりません。しかし、「フローリング」の洋間では天井と床の反射率が高く、非常に強いフラッターエコーが発生します。このような部屋では、手を叩くと「キンキン」あるいは「ギンギン」というカン高い不愉快なエコーが発生します。天井のコーナーでも、壁を伝わって逃げ場を失うようにぶつかり、圧迫感のある耳障りな音が発生します。

フラッターエコーを発生させないためには、「部屋の中で平行する平面」の両側、あるいは片側を吸音し、音の往復運動が起きないようにすればよいのです。そのためには、「天井」あるいは「床」のどちらかに吸音措置を施す必要がありますが、「天井」を吸音構造にするには、部屋の大改造が必要となり現実的ではありません。(2002年にサーロジックから発売されたスカラホールは安くて効果のある天井吸音用アクセサリーです)天井ではなく「床」に吸音措置を施す方が得策です。それには、「厚みのあるカーペット」を設置することが最も簡単です。「音源」に近いところで「吸音」すると効果が高いので「吸音効果の高い=厚みと重量のあるカーペット」を「スピーカーの直前に敷く」のが理想的です。カーペットの大きさは、横幅が「スピーカーの設置幅の約2倍」、縦(奥行き)が約1−2m程度は必要です。

次に大きなフラッターエコーが発生しているのがスピーカー左右と前後の壁の間です。大きな部屋や変形のリビングなどでは、壁によるフラッターエコーの悪影響は比較的小さいのですが、4.5〜6畳程度の小さめの部屋で壁同士が正対していると大きな悪影響が生じます。小さなリスニングルームでは、スピーカーの左右と背後の壁からの反射を抑え、壁によって発生するフラッターエコーを低減するために、壁全体を覆うように「カーテン」を設置する事を強くお薦めします。

n       壁からの反射を抑えて定在波を減少させる方法

設置するカーテンは、「遮光性1級」あるいは「簡易防音」などの種類を使えば効果が最も大きいはずです。できれば「厚手」と「薄手」のカーテンを2重に設置できるようにしておけば、カーテンの開け閉めでルーム・アコースティックを調整することができ大変便利です。カーテンを設置する場所は、「スピーカーの背後」と「スピーカーの左右」の壁が良いでしょう。「スピーカーの背後」はできれば全面に、「スピーカーの左右」はスピーカーの背後より始まって、スピーカーの前1−2mくらいまでは必要です。

さらに低音の回り込みを防ぐために、壁と垂直方向に吸音材を配置すれば音場空間の濁りや低音のもやつきを効果的に抑えることが出来ます。

n       天井コーナーからの反射を抑えて定在波を減少させる方法

 

天井のコーナー部分では壁に沿って進む音が集まりぶつかり合って「圧迫感のある残響音」を発生させています。この「天井のコーナー」からの残響を低減するために、各社から発売されているコーナータイプの吸音材を天井の四隅に設置する事をお薦めします。

設置は、できるだけ一対のコーナー又は全部のコーナーに行って下さい。片側や一部のコーナーだけに設置すると、音の広がりが偏ることがあります。スピーカー直前の床に毛足の長いカーペット(ムートンを推奨)を敷いたり、天井に吸音材を設置すると、上下方向へ大きく音が広がり、楽器の位置関係や分離感が向上します。

 

マルチCh化は、ステレオ(2Ch)に3Chを追加するだけでよい

n       5本のスピーカーを同じものにしなければいけないのか?

ステレオ(2Ch)ではスピーカーは同じものを2本揃えれば済みました。マルチチャンネルではセンターに1本・リアに2本・さらにスーパーウーファー(必ずしも必要ではありません)を加えた、合計5本+1本(5.1Ch)のスピーカーを使用します。スピーカーの数が増えると「5本ともすべて同じスピーカーで揃える」のは、空間的にもコスト的にも難しくなります。そんなユーザーの真剣な悩みをどう考えているのかわかりませんが、ほとんどのメーカーは「すべて同一のスピーカーを使いなさい」あるいは、「すべてのスピーカーは同一のメーカー品にしなさい」などと自分勝手なことを言っています。しかし、はたして本当にそうなのでしょうか?

実際のコンサートを想像してください。ステージは前にあり、ほとんどの音は「ステージの方向」からやってきます。フロント(センター)スピーカーが受け持つ、ステージ方向から来る音は「楽器などの直接音成分が中心に構成」され、それらを正確に再現するスピーカーには、「アタックなどが明瞭に再現される過渡特性の良さと周波数レンジ、Dレンジの広さ」が求められます。

リスナーの後方に設置されるリアスピーカーが受け持つのは「後ろからの音」です。後方から来る音は、フロント(センター)が再生する音とは違い、「ホールの残響音や反射音などの間接音」が主体に構成されています。間接音の再現に求められるのは「良好な音の広がり」です。そのためリアスピーカーは「無指向性に近い大きな音の広がり」を持つことが理想です。

このように、マルチチャンネルのフロントとリアに求められるスピーカーの特性はかなり違います。そのために「同じスピーカーを5本配置」するよりも、積極的に「より適したスピーカー」を選ぶことが必要です。「同一のスピーカーを5本使いなさい」という説明は間違いなのです。

 

フロントスピーカー

センタースピーカー

相性

ソフトドームツィーター

ソフトドームツィーター

ハードドームツィーター

ハードドームツィーター

ホーンツィーター

ホーンツィーター

ソフト(ハード)ドームツィーター

ハード(ソフト)ドームツィーター

ソフト(ハード)ドームツィーター

ホーンツィーター

×

ホーンツィーター

ハード(ソフト)ドームツィーター

 

n       フロントとセンタースピーカーの選び方

同じ音が、3本に分割されて再生されるフロントスピーカーとセンタースピーカーの音色は、可能な限り近い方が好ましく、例えばツィーターの材質を、フロントがソフトドームならセンターもソフトドーム(ハードならハード)にするとか、フロントが2Wayバスレフ方式ならセンターも2Wayバスレフ方式(ユニットの口径もできるだけ近づけられればベスト)にするなど「音色のバランス」を注意して合わせてください。また、フロントとセンターでサイズの違うスピーカーを使う場合には、音質のバランス(低音と高音の質感や音色の違いなど)に十分注意してください。

少しでも低音を稼ごうと多くのセンタースピーカーは「Wウーファー方式」を採用していますが、中音(特に声)が濁ったり、音場の奥行きを阻害する原因となるので、センタースピーカーは「シングルウーファー方式」が適しています。様々なセンタースピーカーによる音質をテストしましたが、センタースピーカーは「定位の補助」として作用させることが好ましく、周波数としては、「100Hz〜200Hz以上」が再現できれば十分な効果があります。逆に低音を少しでも増やそうと欲張ってセンタースピーカーを大きくすると、低音よりも中高音の指向性が強くなりすぎて不快な圧迫感を生じます。また、大型のスピーカーは音が上手く広がらないため中央奥への音場の自然な広がりが損なわれてしまいます。特にリスニングルーム(シアタールーム)が10〜12畳以下の場合には、安いから「音が悪いだろう」などとと思いこまず、ウーファーの口径が16センチ程度以下の小型2Way方式のスピーカーを選んだ方が良好な音質が得られます。3Way方式などの本格的なセンタースピーカーが効果をあげるのは、部屋のサイズが20〜30畳を超えてからです。  

n       リアスピーカーの選び方

リアスピーカーは、フロントスピーカーと音色が違ってもさほど気になりませんから、方式や音色の質感などを合わせるために、無理して新しいスピーカーを購入する必要はありません。手元に小さなスピーカーがあればそれをリアに置いて試してください。結構十分な音質が得られると思います。ウーファーの口径が16センチ以下でドーム型のツィーターを搭載している、トールボーイデザインのバッフル面積が小さいスピーカーが適しています。大型スピーカーは指向性が強くなりがちで、また設置の自由度も低くなりますからリアに無理して大きなスピーカーを置く必要はありません。

理想的なリアスピーカーは、周波数帯域が広く指向性が穏やかな製品です。選び方はほぼセンタースピーカーと同じでよいのですが、違う点は低音がでる方がより良好な音質が得られる事です。ソースは限られるのですが、リアスピーカーだけから「周波数の広い音」が再現される場合などに、低音が出せるリアスピーカーは効果を発揮します。オーディオプロの製品なら、IMAGE11がセンターに、IMAGE40がリアに適しています。

n       スピーカーの設置場所

 スピーカーを設置するときに最も大切なのは、「同一平面上(出来るだけツィーターの高さが揃うよう)に5本のスピーカーを配置する」ということです。特に前3本のスピーカーは、可能な限り同じ高さになるように配置してください。センターを床に置いたり、天井に付けたりするのは感心しません。そんな位置に設置するくらいなら、センタースピーカーをなくすほうが音は良くなります。リアスピーカーもフロントスピーカーと同じ高さか、それよりもやや高い位置に配置するのが理想です。



 

センタースピーカーはスクリーン(TV)下端に設置する

上向きの角度を付けず、水平に設置すると音が自然になる

スクリーンを設置しない場合には、ツィーターの高さをフロントスピーカーと揃える

 

リアスピーカーはスリムなトールボーイスタイルが理想

リアスピーカーの高さは、フロントスピーカーと同じか少し高い位置に取り付けるのがベスト

大きすぎるリアスピーカーは音の広がりを損ねる

 

 

 

センタースピーカーとフロントスピーカーの角度は、30度が理想。30度が無理な場合には、できるだけ45度以下になるようにする。センタースピーカーは極端に左右によらなければ、厳密にフロントスピーカーの中央でなくても良い。

リアスピーカーは、フロントスピーカーから110度の位置が理想。極端に後方になるのは避ける。(140度以下)

 

レーザー・セッターを使用してスピーカーの位置決めを行う場合には、フロントとセンターはリスニングポイントの前に (レーザー・セッターのマーク)置いて調整する。

リアスピーカーを調整する場合には、リスニングポイントの後ろで調整する。レーザー・セッターに挟まれたエリアで理想の音場空間が実現する。

 

5本のスピーカーが水平(やや後ろ上がりでもよい)の同一平面上に、きちんと配置されたとき、マルチチャンネル・システムは最高の音場再現性(音の広がり)を発揮します。大きなスピーカーを置き場所に困って不揃いに配置するよりも、高品質な小型スピーカーを同一平面上に配置する方が空間再現性(音の広がり)や音の動きのシャープさ・正確さは遙かに優れています。

リアスピーカーを天井に付けるのもできるだけ避けたいのですが、部屋の構造上どうしてもそこしか場所がない場合にもやはりできるだけ小さくて、指向性のゆるやかなスピーカーを選ぶ方が良好な音場空間が実現します。

逸品館では3号館(2部屋)・1号館(1部屋)の合計3つの試聴室で

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